自炊日記

2000年4月30日〜5月6日


東鳴子温泉 高友旅館



・5月5日(金) 雨のち曇り
 明日でこの湯治も終了。今日が最後の一日だ。
 いつの間にか男性陣が減り、この部屋に寝ているのは僕とじいやの二人だけ。二人とも10時ぐらいには起きてしまう。
 待てど暮らせど女王様たちは起きてこない。やっと起きてきたと思ったら、風呂にいくから貴重品を預かって欲しいとのこと。とりあえず、飯でも炊いておこう。
 前々から女王様たちに与えられていた宿題を思い出す。仙台銘菓の「しもばしら」が埋まっている粉を使って何か料理を作れという問題だ。「しもばしら」とはその名の通りの形をした砂糖菓子で、すぐに崩れてしまうので落雁を粉にしたような感じの白い粉に埋まっている。この粉自体は食べられると書いてあるのだが、甘みが付いていないのでそれだけでは粉っぽいだけだ。「しもばしら」は女王様たちのお気に入りなので粉だけ大量に余っているのだ。
 3日に女王様たちが到着したときに受け取った粉を味見してしばし考えているとひらめいた。まず、里芋の皮をむき、1cm弱の厚さに切る。塩水でぬめりをとり、塩と白醤油で薄く味付けをし下ゆでをする。やや堅めにゆであがったら水分を切り、軽くふき取る。これにたっぷりとしもばしらの粉をまぶして、やや多めの油で両面に焦げ色が付くまで焼くのだ。
 うまくイメージ通りに仕上がるかどうかわからないのでとりあえず下ゆでが終わったところで1つだけ試作してみることにする。
「うまい!」
イメージ通りだ。女王様たちが風呂から出てきたら残りを焼くとしよう。
 ところが、1時間過ぎても女王様たちは出てこない。冷めてしまうのが気になるが、とりあえず他の料理の準備を進める。みそ汁用のだしをとり、豆腐とネギを入れて温めるだけの状態にしておく。しかしまだ出てこない。
 全員が出てきたのは1時過ぎ。おいおい、昼飯にも遅い時間だぞ。
 とりあえず、里芋の霜柱まぶしを焼き、みそ汁を温める。ついでに埼玉で買ってきたチョリソーとレタスを炒める。超豪華な朝飯だ。
 里芋はかなり好評。うーん、完全なオリジナルメニューなのでレシピにアップしたいところだが、「しもばしらの粉」なんて書いたら怒られるだろうなぁ。

 しばらくだらだらした後、やはり鳴子の共同浴場に入りたいと言うことで、女王様2号、3号、じいやが出かける体勢に。やはりめしつかい1号としてはご案内せねばということで一緒に出かけることにする。女王様1号、4号は部屋でお休みのようだ。
 車で出ると駐車場が面倒なので電車(ん?電化されてたかなぁ?)で鳴子にむかう。東鳴子温泉のある鳴子御殿湯駅と鳴子駅は一駅だが、電車は一時間に1本ぐらいしかないため帰りの計画も立てておかなければならない。留守番の女王様たちの琴線に触れないためには18時前には戻ってこなくてはならない。

 女王様2号とじいやは帰りも電車なので周遊券で来ている。女王様3号は僕の車で帰るので、僕と二人で切符を買う。たった一駅なのに、定期サイズの磁気付き切符を手渡された。うーむ。これでこそ温泉情緒と言うものだ(????)。
 鳴子御殿湯と鳴子を結ぶ陸羽東線は基本的にワンマンカーで降りるときにはボタンを押さなければ扉が開かない。さすがに鳴子駅は降りる人が多いのか、ボタンを押さなくても扉が開いた。

 まず一直線に共同浴場の滝之湯へ向かう。鳴子には2回来ているが、滝之湯は初めてだ。とは言え、場所はわかっているので、ぐいぐいと他の三人を引っ張ってゆく。なにせ途中には土産物屋がたくさんあるのでひっかからないようにしなければいけない。
 滝之湯は思ったよりも混んでいた。まず脱衣場が空かない。やっとの思いで服を脱ぎ、中にはいると湯船につかるすきもない。なぜこんない混んでいるんだ。
 好きを見計らって湯船に。頭を洗おうと思ったのだが、とてもそんな隙はない。せめて打たせ湯に...と思ったが、これも空く気配はない。
 しばらくつかっていたが、高血圧の身にはきついので先にあがることにする。まだ集合時間には20分ほどあるので、さっき駅前で見つけたグレ電でメールチェック。こんなこともあろうかとPowerBookを背負ってきたのだ。
。  うーむ、40件もメールが来ている。しかし、電話ボックスは西日を浴びていてよく見えない。とりあえず、接続を切り、集合場所へ。約束の時間の16時15分にはまだ5分ぐらいあるが、待っていたじいやに聞くと女王様たちは風呂から出たけど温泉神社へ行ってしまったとのこと。仕方ないので座れる場所を見つけ落としたメールのチェック。うむ、とりあえず仕事のメールは来ていない。緊急と思われるメールも2件あったが、帰ってからでも間に合うと勝手に判断し返事をせずにPowerBookを閉じる。
 しばらくして女王様方が戻ってきたので2日に行った老舗・高亀へ。女王様2号が土産を買うも、店のおばちゃんの要領が悪く、なかなか終わらない。充分に時間があったはずが、気が付くと帰りの電車まで15分しかない。あわてて、例のぐい飲みを買った土産物屋へ。
 どうにも気になって仕方がなかったので、例の箸をセットになっている器と一緒に買うことにする。店の主人は3日前にぐい飲みを買ったのと同一人物だとは気が付いていないようだ。あれほど印象が強かったはず何に、と思ってよく考えると、2日前とは違う女性を連れているのに気付く。思い過ごしかもしれないが、そこまで気を遣っているとすれば大した物だ。


 何とか電車(?)の時間に間に合い鳴子御殿湯へ。ほとんど野菜が残っていないので例のスーパーへ行く。背負ったPowerBookが重いので他の3人に先に帰っていてくれと頼み、リュックごと持って行ってもらう。
 しみじみと見ると、このスーパーはなかなか変わった物がある。特に土地柄か、お麩の品揃えは異様に豊富。個人的に使えそうなので棒状の油麩を買った。

 今日の夕食はキャベツ鍋
 これでは足りないかと思ったが、以外と何とかなってしまった。女王様3号が職場で余っていた酒(究極の花垣・大吟醸鑑評会用)を処分するために持ってきてくれたのだが意外といける。おそらく相当に良い酒なのだが、半年近く常温で放置されてしまったためかなり熟成が進んでしまっている。まぁ、僕にとってはちょうど良いのだが...。
 いちばんすっきりした白菊が空いてしまい、濃い酒しか残っていないので女王様1号がやや不機嫌になってしまった以外は平和そのもの。殿がいないと何も事件が起こらないのでちょっぴりさびしい。長いようで短かった今年の湯治の最後の夜も淡々と更けて行く。
 


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