星日記

2001年7月20日〜7月22日

福島県 浄土平


・7月21日(土)
 なんだか夢の中で流れ星を見た気がする。それともあれは本物だったのだろうか。
 目が覚めたらなんだか空が白っぽい。まだ3時過ぎなので明るくなってくる時間ではないはずだ。
と、思ったところでよく考えると今はまだ7月。いつもここに来るのは8月なのでもう少し日出が遅くなる時期だ。調べてみると今日の日出は4時半ごろ。あれま、もう明るくなり始める時間だ。ほとんど流れ星を見ぬままに眠り込んでしまったらしい。
 と、突然、明るい光が!
 流れ星かと思ったが、ゆっくり明るさを変えながら空を横切ってゆく。何だ、人工衛星か。それにしてもやたらと明るい人工衛星だ。

 やがて空はどんどん白んで行き、東の空に明けの明星、金星を残したまま日出の時間を迎える。
 しかし、東の空には厚く雲がかかっていて日出はおろか、朝焼けも見られそうにない。あきらめて小舎へと戻ることにする。
 山小屋の朝は早い。まだ5時だというのにほとんどの人が起きて活動を始めている。中にはもう出かけてしまった人もいるようだ。
 朝食は6時なのでそれまでしばし仮眠。毎度ながら切れ切れの睡眠だ。

 ここの食事は朝から品数が多い。しかし、極端な睡眠不足のためなんだか食欲がない。それでもほとんどのものを平らげてしまう。食後はまた仮眠。って、どれが仮眠でどれが本眠なんだ?

 12時ごろに起き出し、レストハウスへ昼食をとりに行く。
 朝食を摂ってからずっと寝ていたのでほとんど食欲がない。3色盛りそばを頼む。
 今日はとても混んでいて、席に案内されるまでに10分ぐらいかかってしまった。しかし、料理はすぐに届く。更級、田舎、よもぎの3色のそばはこの手の観光地の施設としてはとてもおいしい。ここのレストハウスは食事もおみやげもなかなかのものだ。

 食事を済ますと福島駅方面に降りる途中にある高湯温泉へ。例年吾妻屋旅館へ行くのだが、去年は人数が多く、他の旅館へ行くことになった。今年は2人だけなのでひさびさの吾妻屋へ。
 吾妻屋では一昨年と変わらない笑顔の素敵な若女将が迎えてくれた。1泊だけ泊まったことがあるが、あとは毎年風呂だけ。しかし、ちゃんと名前まで覚えていてくれた。
 女将は申し訳なさそうに、
「申し訳ありません。今年から入浴のみのお客様は10:00〜14:00までとさせていただきました。よろしいですか?」
 時計を見ると13:25。あまり時間はないが男だけなので何とかなるだろう。それにしても料金はあいかわらず300円。本当に商売っ気が無い。
 内湯で頭と体を洗い露天風呂へ。ここの内湯は洗い場が2口しかない。それで人数が多かった去年は来なかったのだ。
 内湯は無色透明だが露天の方は完全に白濁した温泉らしいお湯。夏場はすぐにのぼせてしまうので長く浸かっていることは出来ない。足だけを浸けてしばしのんびり。他にお客さんもなく、どこかでやっている工事の音だけが響いている。
 そろそろ時間かな?と思って上がると5分前。うーん、いい勘してる。フロントへ戻ると「急がせてしまって本当に申し訳ありません。」と女将が平謝り。かえって恐縮してしまう。
 宿の外に出ると何だか去年と眺めが違う。なんと斜め向かいにあった旅館が無い。露天風呂で聞こえた工事の音はこの宿をつぶしている音だったらしい。はたして建て替えなのか、それともつぶれてしまったのか。どうもこの一帯はさびれてきているようなので少し気になる。なんとか吾妻屋さんにはがんばって欲しいものだ。また泊まりに来ようか。

 ふたたび山を登っていくとまだ14時半。久々に少し歩いてみるかと言うことになる。
 小舎にほど近い兎平駐車場から20分ほどで登れる栂平。ここはかつて若かった頃(?)は良く登ったものだ。この一帯はハイキング的に登れる山がたくさん。ここの来始めた頃はまだ20代だったのであちこち登ったものだ。中でも東吾妻と一切経山はそこそこ登山と言えなくもない山。しかし年々体力が無くなり、最近は5分で登れる桶沼が精一杯になってしまった。
 栂平まではせいぜい200mぐらいの高低差。しかも単調な上りなのでほとんど体力はいらない。登り切った先にはこぢんまりとした湿地とそれを取り巻く木道が広がる。そこから少し引き返すような方向へ降りたところが栂平園地だ。季節の狭間のためかほとんど咲いている花もなく、人影も全くない。ただただおびただしい数のトンボが飛び回っている。あまりの静けさにちょっと眠くなってくる。「ああ、ここに女の子と2人でいられたら幸せだなぁ。」とぼんやり考えて我に返るとそこにはむさい男が一人。やれやれ。
 湿地帯を一回りしながら写真を撮り、山を下りる。登るときには全然気が付かなかったが、色の抜けたきのこのような花のような高山植物(名前は聞かないで)がそこかしこに生えている。駐車場の所まで降りてくるとなんと群生になっていた。うーん、気が付かなかった。

 小舎に戻ると17時前。またまた18時の夕食まで仮眠。
 今晩の泊まり客は6人しかいない。3連休だというのに淋しい限りだ。
 今夜の食事はオムレツがメイン。しかし定番の山菜オムレツでは無く、春雨オムレツだ。これはこれでとてもおいしい。

 食後外に出てみると良く晴れている。この時間に晴れているのは極めて珍しい。まだ明るいがさっさと浄土平駐車場へ向かう。
 明るいながらもいくつかの1等星は見えている。さっそくうしかい座の「アークトゥルス」とさそり座の「アンタレス」を使ってセッティング。昨日あげてしまったバッテリーは今日もエンジンをかけている間中充電していたが復活しない。しかたなく今日は車から電源を取ることにする。ずっとエンジンをかけて置かねばならないがやむを得ない。
 アンタレスの隣にはメラメラと燃える火星の姿。アンタレスとは「火星に対抗する者」という意味なのだがまるで勝負にならない。「無謀にも火星に刃向かうもの」と言ったところだ。さっそく火星を導入するが、昨日よりはいくらかましと言ったところで、やはり模様はほとんど見えない。さっさとあきらめ他の星へ。
 昨日はもたもたしているうちに高度が下がり、見にくくなってしまったおおぐま座の銀河たちを真っ先に見ることにする。
 M81、82はかろうじて同じ視野に入る。まったく違った形の二つの銀河はなかなか見応えがある。親子銀河のM51は最初ぼんやりした光点が二つ並んでいるだけのように見えたが、やがて渦を巻いた腕が見えてくる。
 しかし、なんと言っても見応えがあるのは球状星団たち。この時期を代表するM13はもちろんだが、意外にあまり明るくない球状星団のなかにきれいな物が多い。ほとんどの物がちゃんと星に分解できるのはLX−200/25のおかげか。今回は荷物が増えるので去年まで使っていた18cmの反射望遠鏡は降ろしてきてしまったのでくらべることは出来ないが、LX−200/25は口径が大きいためある程度倍率をかけても暗くならないので見応えがある。
 ちなみに望遠鏡に詳しくない人には望遠鏡は倍率が高い方が性能がいいと思っている人が多いがそれは全くの誤解。たいてい望遠鏡は無理やりならかなりの高倍率に出来る。しかし、口径の小さい望遠鏡の場合は倍率を上げればあげるほど星の像は暗くなり、ぼんやりしてしまう。一般的には口径をmmで表した数字の2倍ぐらいが限界と言えよう。つまり口径が10cmの望遠鏡なら200倍。LX−200/25は25cmなので500倍ぐらいまでが実用範囲だ。
 また、適正な倍率は対象や気流条件によって異なる。火星のような惑星は条件が良ければある程度倍率をかけた方が良いが、銀河や星雲は低めの方が見易い。球状星団は大きさにもよるが中間ぐらいだ。今回は200倍前後がちょうど良いようだ。
 すっかり球状星団に魅せられてしまい、自動導入装置を球状星団のみにセットし星空散歩。見栄えのグレードがVG(Very Good)以上の物で20個ほどを見た。その後M(メシエ)天体とめぼしそうな2重星を次々に導入。とにかく見ていて楽しい。

 12時を回った頃、ガスがかかってきた。しばらく待機して酒を呑んでいたがどうも晴れる様子がない。眠くなってきたので1時頃に片づけて小舎に戻ることにする。
 LX−200/25は撤収も楽だ。5分とかからずに分解できる。車に収納してサァ、帰ろうと言うときになって空を見上げるとなんと晴れてきている。いまさら望遠鏡をもう一度出すのは面倒なので、昨日に続きシュラフにもぐって流れ星を見ようと言うことになった。
 しかし、結果は昨日に続いてそのまま爆睡。



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