1999年8月12日〜8月15日
8時に目が覚める。
出発は11時だが、昨日まであまりに忙しかったため準備がまったく出来ていない。
大急ぎで荷造りを始める。
車に荷物を積み込んでいると、向かいの家のおじさんに声をかけられしばし井戸端会議。
約束の11時になっても同乗者の殿は現れない。いつものことなのでややあきらめ気味。いつも時間通りに来ないんですよー。と、おじさんに愚痴る。
遅れること30分、やっと殿が現れる。今回も殿とふたりっきりだ。
今回はもうひとり若い女の子が一緒のはずだったのだが、体調不良でキャンセル。どうやら僕はこういう星のもとに生まれてしまったようだ。
TVの渋滞予測では下り方面は今日がピーク。ラジオの交通情報を聞きたいのだがなかなかやらない。4時に福島駅で新幹線組と合流の予定なので少々焦る。
それなのに、殿と来たら、
「2万円しか持ってないから郵便局へ寄ってくれない?」
おいおい、なんで職場で降ろしてこなかったんだよ。
「30分も出発が遅れたんだから寄ってる暇はない!」
と、却下。最近どんどん殿への対応が冷たくなっている自分が悲しい。
東北道を走り出すと、意外に順調。しかし、宇都宮近辺で12Kmの渋滞が出ている。まぁ、この時期12Kmなら可愛いもの。
昼飯を食べている暇は無いので、コンビニで買ったおにぎりを食べながら運転する。
ついに渋滞に捕まるが、完全に停止状態にはならず、20Km/hぐらいでゆるゆると走っている。これなら12Kmぐらいわけない。
途中、ぽつぽつと雨が降り出すが、思ったよりも順調。須賀川を過ぎたところでまだ3時。これなら充分4時の待ち合わせに間に合う。
と、思ったのもつかの間。
「郡山−本宮2Km」
の表示。
うーむ、微妙だなぁ。
ところが、現実は微妙どころではなかった。郡山南を過ぎたところで突然まったく動かなくなる。
「おいおい、渋滞は郡山からだろ?」
愚痴れども愚痴れども動かない。郡山インターを過ぎたところですでに3時50分。これはだめだ。このまま福島へ向かったら何時になるかわからない。合流をあきらめ、磐越道経由で浄土平へ向かうことにする。
磐越道に入ってすぐの五百川パーキングで女王様1号に連絡を取り、別行動で現地に向かってもらうことにする。
新幹線組は福島駅でレンタカーを借り、現地に向かうことになっている。順調なら磐越道経由の我々より先に着くだろう。運転は「めしつかい2号」改め「じいや1号」だ。
磐越道を磐梯熱海で降り、母成(ぼなり)グリーンライン−磐梯吾妻スカイライン経由で浄土平に向かう。
グリーンラインは快調そのもの。さっきまでの渋滞がウソのよう。気持ちよく走って磐梯吾妻スカイラインに向けてハンドルを切ったとたん、目の前が真っ白に。とんでもないガスだ。料金所のゲートも見えない。
おそろおそる進みながらゲートが見えたのはほとんどぶつかりそうな距離。ここからの山道、大丈夫だろうか。それにもまして山道になれていないじいや1号は無事にたどり着けるのだろうか。
視界は良いところでもせいぜい10m。幸いにもほとんど対向車、後続が来ない。慎重に走っていたものの、気がつけば意外に早く現地に着いていた。
バッグひとつとギターのハードケースを車から降ろし、宿となる吾妻小屋へ。ここは車で小舎から100mぐらいのところまで行ける珍しい山小屋だ。管理人の遠藤さんご夫妻に挨拶し、ロビー(っていうのか?)へ。まだじいやたちは着いていないようだ。
20分ほどでじいやたちも到着。どうもレンタカー屋のおじさんが話し好きでなかなか開放してもらえなかったらしい。
夕食は山菜の卵とじを中心に山のおかず満載。山小屋と思ってくるとびっくりするくらいここの食事はおいしい。初参加の女王様2、3号、じいや、「皿洗い2号」昇格「皿洗い1号」も黙々と食べている。
天気が悪そうなので、早々と持ってきた日本酒を開ける。GWの自炊宿でも評判だった黒牛だ。同宿の星屋さんたちとも盛り上がりながら初日の夕食を終える。
外はざんざん雨が降っている。今日はだめかなと思いつつ、8時頃外へ出てみると曇ってはいるものの雨は上がっている。雨音だと思っていたのは木々から落ちてくる水滴の音だったようだ。
とりあえず、小舎のそば駐車場で晴れるのを待つことにする。本来星を見るのは1kmぐらい離れた浄土平の有料駐車場だが、今回は小舎の駐車場にほとんど車が止まっていないのでそこで見てもいいかなと言うことで意見が一致。晴れるまでの間は車の中で宴会だ。なにしろ山小屋の夜は早いので小舎で宴会はできないのだ。
レンタカーは8人乗りのボンゴだが、さすがに8人で宴会するのには狭い。いつもなら今の時間はセーターは必須。場合によってはダウンを着なければならないほど寒いのだが今年は異常に暑い。そのうえ狭いところに8人も入って酒を飲んでいるのだからたまらない。
差し入れのマーブル・パウンドケーキを食べながら日本酒を飲む異様な集団。今回も黒牛は評判がよい。くせが無くすっきりしていて、なおかつ味が豊か。本当に飽きが来ない酒だ。
ちらちらと窓の外を見ながら宴会は進む。時折、いくつかの星が雲間から顔を見せるが外に出るほどではない。程なく黒牛は空き、2本目の開運・吟醸へ。こいつは辛い。おまけに重い。すっきり系がお好みの女王様たちはちょっとご不満のようだ。順番を間違えたか。
やがてみんなつらくなり眠ってしまう。
3時頃、突然皿洗い1号が叫び声をあげる。
「晴れてる!」
あわててみんな外へ出る。ほんとだ。晴れてる。
そそくさとマットとシュラフを出しみんなで横になる。女王様1・3号は睡魔に負け車の中で爆睡。
あれよあれよという間に5、6個の流れ星を数える。
ところが疲れがたまっていたのか、すぐに意識がもうろうとし、気がついたら明るくなり始めていた。
車のドアの音で目を覚ますと、女王様たちが手を振りながらボンゴは駐車場を出ていく。ああ、雲海でも見るのね。と思いつつ、またまた深い眠りに。ここは何日かに一度、雲海が見られるのだ。
やがて車が戻ってきた。雲海はだめだったようだ。
朝食は6時からなので小舎に戻って30分ぐらい寝ることにする。
昼夜逆転の3泊4日の幕開けである。