星日記

2003年5月26日〜5月28日

福島県 浄土平


・5月26日(月)
 今日から20年勤続特別休暇。本当は昨夜のうちに出発しようと思っていたのだが昨日届いたバッテリーの充電が終わらず今日になってしまった。今12時。まだ完全に充電は終わっていないがそろそろ出発しないと。
 フイルムを仕入れたりしているうちに1時になってしまったが平日とあって道はがらがら。4時半前には吾妻小舎に着いてしまった。福島県に入ったあたりから気温が下がり始め、どうなることかと思ったが小舎のあたりはそれほど寒くない。夏場でも夜星を見るのはフル装備が必要なこの場所、寒さは覚悟していたがどうやら今日は大丈夫そうだ。
 平日なので客が少ないだろうとは思っていたが何と今日は僕ひとり。管理人の遠藤さん夫妻と3人だけの夜だ。もう15年以上ここに通っているがこんなのは初めて。いつもなら別々なのだが今回は遠藤さん夫妻といっしょに食卓を囲む。もちろんここには星を見に来たのだが空はどんより。とても晴れそうな感じではない。3人で酒を飲みながら雅子さんのおいしい料理をゆっくりといただく。小屋の前で採れたばかりのふきのとうをはじめとした山菜の天ぷらがおいしい。酒はビールに始まり大七の生もと本醸造と奥の松大吟醸。果てはお客さんのおみやげだというネパールの焼酎。大七はさすがという感じだが奥の松はちょっと???。ネパールの焼酎はなんだか言葉に出来ない不思議な味。ああ、何が原料なのか想像が付かない。うっすらと黄緑色を帯びている。
 すっかり話も弾み、いい加減酔っぱらったので日付が変わる頃床につくことにした。いつもは他のお客さんがいるので夜に出入りする僕たちは別室に眠ることが多いのだが今回はひとりだけ。普段は朝が早い人が眠る一番下の寝床で眠らせてもらう。疲れなのか飲み過ぎなのか、あっという間に眠りに落ちてしまった。


・5月27日(火)
 いつもなら夜中に何度も目が覚めるのに、今日は6時頃までまったく目が覚めなかった。こんなに熟睡したのは初めて。
 夕べ星が見られなかったので延泊を決定。いつもなら昼近くまで寝ているのだが今回は夜ちゃんと寝ているので昼間はヒマだ。用事で遠藤さん夫妻が蕎麦で有名な山都(やまと)に行くというので同行させて頂く。いつもは自分の運転で下る山道を今日は助手席。なんだか不思議な感じ。あいにく曇り空だが風景を楽しむ余裕がある。
 山都は直線距離は近いのだが大きく迂回していかなければならないため2時間近くかかる。とんでもなく細い山道(国道なのだが)は新緑で緑のトンネル状態。山肌には一面の栃の花。天然の藤も所々に自生している。下向きの藤と上向きの栃が色こそ違え対照的な形。栃の花は短い間しか見られないそうで、こんなにたくさん咲いているのは初めて見た。ちょっと得した気分。
 ちょうど昼食時なので山都ではもちろん蕎麦。あまり色は黒くないが、味が濃く腰の強い蕎麦だ。さらにおつまみには刺身こんにゃく。青海苔が入っているが色はほとんど無色透明。舌に乗せただけでとろけてしまう。
 帰り道、再び磐梯吾妻スカイラインを走っていると目の前にサルの姿。気が付くとものすごい数のサルが道ばたの木に。何年か前に初めてここでサルを見たがいつのまにかこんなに増えているとは。生まれたばかりのような小猿もいる。幸い人間にがいは及ぼしていないようだが。
 小舎に着くと4時。夕食まで小舎備え付けのマンガを読んで時間をつぶす。
 今日も天気が悪くなかば星はあきらめ気味。食事は馬刺や遠藤さんの手になるゴーヤチャンプルーなど、なんだか酒のつまみっぽい。今日は僕の持ってきた「福乃友・とっておきの酒」で乾杯。原酒で無いくせに18度もある強い酒に遠藤さんも僕も早々とヨッパライ気味。時折雨音がしていたのだが10時頃ふと気が付くと星が出ている。あわてて支度をして外へ。
 あれよあれよという間に雲が抜け、望遠鏡とCCDカメラ、パソコンの準備が整った頃には雲一つ無い快晴になってしまった。おまけに雲海にでもなって街からの光を遮っているのかここ数年明るさを増している福島方面の空もかなり暗い。突然訪れたチャンスにちょっとあわて気味。
 去年、自動導入の望遠鏡、MEADのLX-200/25の精度の悪さに悩まされたので今回はタカハシのEM-10に載せた18cmニュートン反射一本に絞る。しかしずっと楽をしていたツケか、なかなか自力で目的の星を導入できない。撮影する機会の少ない春の星雲星団を撮ろうと思うのだがじたばたするばかりでまったくだめ。手入れを怠っていた望遠鏡のファインダーの曇りがそれに輪をかける。最初のターゲットはおおぐま座のM51。以前であれば一発で導入できるはずがなかなか入らない。フィンダー内にかすかにそれらしい影をとらえ、やっと今日初めての撮影。露出時間を30秒にセットしてスタート。
 あれ?なんだこれは?違うぞ。パソコンの画面に現れてきたのはM51とは似てもにつかない形の銀河。どうもそばにある別の物(後で調べてM63とわかった)を導入してしまったらしい。
 だんだん気温も下がり、望遠鏡を操作する手が冷たい。軍手を取り出すが、今度はCCDカメラの固定ネジがうまくしめられない。そんなこんなでじたばたしたあげく、なんとかM51、M101を撮影。わずかこれだけを撮影するのにかかった時間は3時間。もう2時になる。明日は場所を移動することでもあるのでそろそろ片づけることにする。
 それにしてもいつもなら駐車場なりそばのキャンプ場なりに必ず誰かいるものだが今回は誰もいない。すでに寝ている遠藤さん夫妻以外は僕だけだ。撮影中は集中しているから気にならなかったが片づけにはいるとなんだか心細い。夜露がしたたる音もどこからともなく響いてくる。なんだかいやに片づけに手間取ってしまい、小舎に戻ったときにはすでに3時を回っていた。


・5月28日(水)
 昨日にくらべるとなんだか熟睡できずに朝を迎える。窓の外は曇り気味、結局僕が外にいた間だけ晴れていたのだろうか。
 吾妻小舎は水曜日が定休日なので遠藤さん夫妻は今日山を下りる。素泊まり出来ることは出来るのだが、とりあえず目的は果たせたことだし今日は山を下りてどこかの温泉に泊まることにする。
 朝食を食べ、遠藤さんに挨拶をして浄土平駐車場へ。蓬莱山と一切経山の間を登り、まだ雪の残る鎌沼を巡ってから山を下ろうと思っていたのだが昨夜の天気がうそのように今にも雨が降り出しそうな空。おまけに蓬莱山はすっぽりと雲に包まれている。鎌沼のあたりは完全にガスっているに違いない。ルートもまだまだ雪が残っているようなので今回は断念することにする。でもちょっと心残り。この時期にここへくるチャンスなんてそうはない。しかし雨具もなければちゃんとした靴も持ってきていないし仕方がない。
 とりあえず、代わりと言っては何だが5分で登れる桶沼まで登り、わずかに残った雪を映す水面をフイルムに収める。
 レストハウスで定番になったよもぎめんを買いあさり浄土平を後にする。次は8月かな。
 さぁ、これから何処に行こう。

温泉日記へ続く(たぶん)


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